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とびとかきととり

鳶と柿と鶏

豊島 与志雄

「知性」1939(昭和14)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,493 字 · 21 页

青空文庫

一

一

丘の上の小径から、だらだら上りの野原をへだてて、急な崖になり、灌木や小笹が茂っている。その崖の藪に、熊か猪かと思われるようなざわめきが起り、同時にわっと喚声があがって、一人の青年が飛び出して来、次で子供が三人飛び出して来た。

吉村はびっくりして、小径につっ立っていた。

見ると、青年はたしかに李永泰である。無帽で、運動シャツ、学校の教練ズボンのお古らしいのをつけている。三人の子供は村の者らしい。李は吉村に気がつかないのか、子供たちとふざけながら、片手で栗の実をもてあそんでいた。

吉村がじっと見ていると、やがて先方でもその視線を捉えたか、李は吉村の方をすかし見たが、ほうというように口をあけて、野原をつっきり走って来た。

「吉村先生ですか。こんなとこに、どうしていらしたんです。」

随分久しぶりな筈だが、そんなことはどうでもよいのであろう。吉村が此処に来てふのが、ただ不思議らしい。

一週間ばかり前から、急な仕事をもって、三週間ばかりの予定で、その海辺の粗末な宿屋に来てることを、吉村は微笑みながら話した。

「あんなとこで、仕事なさるのですか。」

「どうして。