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おうがい・そうせき・とうそんなど

鴎外・漱石・藤村など

宮本 百合子

「父上様」をめぐって

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,643 字 · 10 页

青空文庫

つい先頃、或る友人があることの記念として私に小堀杏奴さんの「晩年の父」とほかにもう一冊の本をくれた。「晩年の父」はその夜のうちに読み終った。晩年の鴎外が馬にのって、白山への通りを行く朝、私は女学生で、彼の顔にふくまれている一種の美をつよく感じながら、愛情と羞らいのまじった心でもって、鴎外の方は馬上にあるからというばかりでなく、自分を低く小さい者に感じながら少し道をよけたものであった。観潮楼から斜かいにその頃は至って狭く急であった団子坂をよこぎって杉林と交番のある通りへ入ったところから、私は毎朝、白山の方へ歩いて行ったのであった。

最近、本を読んで暮すしか仕方のない生活に置かれていた時、私は偶然「安井夫人」という鴎外の書いた短い伝記を読む機会があった。ペルリが浦賀へ来た時代に大儒息軒先生として知られ、雲井龍雄、藤田東湖などと交友のあった大痘痕に片眼、小男であった安井仲平のところへ、十六歳の時、姉にかわって進んで嫁し、質素ながら耀きのある生涯を終った佐代子という美貌の夫人の記録である。「ともすれば時勢の旋渦中に巻き込まれようとして纔に免れ」「辺務を談ぜないということを書いて二階に張り出し」