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さぎむすめ
鷺娘
大倉 燁子
「宝石 一巻四号」1946(昭和21)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,370 字 · 21 页
「うまく替玉になれるか知ら? そして、あんたはどうするの?」
「楽屋の隅にでも隠れているわ」
「危ぶない話ね、もし見つかったら――」とまゆみは胴震いした。
「光村博士は重病患者があって行かれないと仰しゃるし。見物はまゆみちゃんの妙技にうっとりと魂を奪われているから、見破る人なんかありっこないわ。危ぶなそうな人には切符をやらないから」
百合子の替玉になって踊る、まゆみは恐しいような、また嬉しいような気持ちがした。そんな機会でも与えられなければ舞台に立つ望みは永久来ないのだ、彼女の頭の中は華やかな舞台の光景で浮き立った。
「この御恩私一生忘れないわ。万が一に光村博士に知れた場合、きっと私が命にかけて引受ける。まゆみちゃんを悲境に陥すような事は断じてしないから、私を信じて、安心して立派に踊って下さいな、ね、いいでしょう」
百合子の眼が否でも応でも承知させずにはおかないというように鋭く光る、まゆみはその眼光に射すくめられたようになって、
「ええ」とかすかに答えてしまった。
百合子はまゆみの手をとって唇に強く押し当てて泣いた。
「ありがとう。あんたは私の命の親だわ」
まゆみは非常に不安だったが、そのまた半面には思いがけない機会が到来してあこがれの舞台が踏めるという喜びがないでもなかった。