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さぎむすめ
鷺娘
大倉 燁子
「宝石 一巻四号」1946(昭和21)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,370 字 · 21 页
3
母に起されて、百合子はパッと眼を開くと、直ぐまた起ち上って復習を始め、母を驚かせた。
青褪めた顔に眼を血走らせ、舞台稽古に馳けつけた。彼女はもう死者狂い、耻を掻かされた家元への吊合戦だ。悲壮な決心で鷺娘に全霊を打ち込んだのだったが、悲しいことには百合子の芸には独特の持ち味もなければ、習った形以外のうまみを見せるということがなかった。焦れば焦れるほどかたくなった。
家元はもう投げてしまって、
「今となっちゃもう仕様がない。反って、お笑いぐさで、愛嬌があっていいよ」と嘲笑した。
笑いを噛み殺していた朋輩達は家元が笑ったので、もう我慢がしきれなくなり、一度にぷっと吹き出した。
百合子は狂気のようになって、楽屋口から外へ飛び出した。
3
百合子が晴れの舞台で鷺娘を踊ると聞いてから、まゆみはすっかり憂鬱になってしまった。
「どうぞ、切符をどっさりはいて頂戴、舞踊界へ入る私の首途を祝福して、成功を祈って下さい。当日は是非お二方様お揃いで御見物のほどを――」
走り書きの手紙に添えて、プログラムと切符が沢山届けられた。
気の利いたそのプログラムを眺めると、まゆみは我知らず心の時めくのを覚えた。