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さぎむすめ

鷺娘

大倉 燁子

「宝石 一巻四号」1946(昭和21)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,370 字 · 21 页

青空文庫

まゆみは細い指先で飴をつまんで口に入れようとしたところへ、噂の主の竹村春枝が入って来た。二十七八のすっきりとした美しい女だった。

「奥様、先生が、応接室に川崎様がいらしてますから、お相手をして下さいませって――」

彼女は自分の口に持って行こうとした飴を竹村にやって、

「ちょいと待っていてね」と百合子を残して竹村と部屋を出ると入れ違いに光村博士が聴診器を首にかけたままで入って来た。百合子は軽く頭を下げてにッと笑った。博士は彼女の膝の前に放り出してある写真を手にとってにやりと笑い、揶揄口調で云うのだった。

「やあ素敵! モダンだな。お婿さんの候補者かい? 素晴らしい美男子じゃないか」

「知らない」

百合子はすねたようにつんとした。

博士はわざと親類書を声高かに読み上げた。

「大審院判事の子息で弁護士か、姉さんが大学教授法学博士に嫁すとあるから家には小姑はなしか、両親はいないし気楽だなあ、その上に財産がある。五十万円――、こいつあ結婚した方が得だぜ」

「いやだわ。光村博士までそんなこと云って、憎らしい! 私は舞踊と結婚して一生舞踊を旦那様だと思って暮すんだわよ」