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さぎむすめ
鷺娘
大倉 燁子
「宝石 一巻四号」1946(昭和21)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,370 字 · 21 页
「おや、それじゃ約束が違うじゃないか」
「まゆみちゃんが死んだら貴方と結婚するッてこと? いつのことだか分らないわそんな話――、ああ、考えるとつまんない」百合子は焦れたそうにハンケチを丸るめて畳の上に叩きつけ、
「誰も彼もみんな癪にさわる人ばかりだ、まゆみちゃんなんか殺してしまいたい、大事な私の光村博士を横取りして、涼しい顔をしているんだもの」
「横取り? ウフウフ。君を光らせるために、まゆみが死ぬほど好きな舞踊を封じてやってるんじゃないか、ちったあ僕に感謝してもいいはずだよ」
「私だって自分の恋人をまゆみちゃんに捧げてるじゃないの。恋を犠牲にしてまでもやりとげようとしている私の芸術も――」
百合子はしばらしく肩を落して、
「天分のないものは仕方がないわねえ、ああまゆみちゃんが羨しい、あれだけ才のある人は見たことがないって家元さん口癖のように云ってらっしゃるわ」
「お世辞さ」
「羨しいより憎らしいわ。私は努力でのびて行くより仕方がないんだもの、光村博士がいくら封じた積りでも、まゆみちゃんいつ気がかわって舞踊家になろうと思うまいもんでもない、この頃少し結婚生活に退屈しているようだもの。