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さぎむすめ

鷺娘

大倉 燁子

「宝石 一巻四号」1946(昭和21)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,370 字 · 21 页

青空文庫

2

あのひとが生きている限り安心が出来ないわ、一層殺しちゃいたい」

百合子は博士にとられた手を邪慳にふりきって起ち上ろうとすると、

「川崎様のお薬が出来ました」

と竹村が薬瓶を持って来た。話に夢中になっていた両人は胸がドキンと鳴った。博士は狼狽して応接室の方を指差し、

「竹村君、川崎さんはあっちだ、早く薬瓶をよこせ、いや、早く持って行って上げろ」

しどろもどろだった。竹村は何も気がつかないように応接室の方へ去った。百合子はほっとして後姿を見送り、

「何んて美しい女だろう。光村博士はあの人好きなんじゃないの? 利口そうなあのぱっちりした眼、油断がならない、何か感付いたんじゃないか知ら?」

「感付いたって構うもんか、あんな奴、追い出しちまえばそれきりだよ。それよりかね、百合ちゃんの名披露何日にするの? 切符をウンと引き受けるぜ」

と博士は話を転じようとしたが、百合子は竹村の事ばかり気にして、

「まゆみちゃんに何か云いつけると困るわ、あのひと、私の方を変にじろじろ見ていたけれど大丈夫かしら?」

「気のせいだよ」軽く受け流して、博士はコロナに火を点じた。

2

舞台稽古の前日になって百合子は急に鷺娘を踊るのがいやだと云い出した。