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たそがれのこくはく

黄昏の告白

浜尾 四郎

「新青年」博文館、1929(昭和4)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,453 字 · 41 页

青空文庫

……僕はこの数ヶ月、毎晩死んだ妻の亡霊に悩まされつづけていたんだ。」

「あんなに愛しあっていたんだからなあ……」

「いや、そういう意味ではない。殺された妻の死霊に呪われつづけたのだ。」

「どうして?」

「どうして? では君もやはり、世間と同じことを信じているのか。山本。僕は何度妻を殺そうと思ったかしれないんだ。そうしてあの恐ろしい夜のあのできごとは、たとえ僕が自分で手を下したのではないと云え、僕に十分の責任があるんだ。山本、僕は強盗に妻を殺さしたのだよ。僕は僕の妻が強盗に殺されるまで、黙って見ていたんだよ……」

「大川、俺には君の云うことが信じられない……」

「だろう。そうだろう。しかしほんとなんだ。僕はすべてに敗れたんだ。仕事の上でも、恋愛の上でも! 僕は君が今なお独身でいることを祝福する。僕は結婚というものがあんな恐ろしいものとは、想像もしていなかった。僕と蓉子とは結婚した。だから僕は敗れたんだ。もしあの時、米倉と蓉子と結婚していてみろ。恐らくは僕が勝ったに違いないんだ。

僕は初め勝ったと思った。少くも恋の上では! 勝って蓉子を完全に得たと信じた。そう信じて半年程幸福に暮した。