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たそがれのこくはく
黄昏の告白
浜尾 四郎
「新青年」博文館、1929(昭和4)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,453 字 · 41 页
僕と妻とはおたがいに終日物を云わないでいる日の方が多くなってきた。もういてもたってもいられないという時になった。蓉子もいよいよ僕を見捨てる決心をしたらしい。蓉子は夫として、芸術家としての僕にとうとう愛想をつかしてしまったのだ。
たしか昨年の九月の十日頃だったと思う、蓉子が不意に僕と別々に生活してみようと云い出した。もう一度舞台に立ちたい、というのが表面の口実なのだ。僕はおとなしくそれをきいていた。そうして何も答えずにおいた。翌日になると蓉子は、もうその問題を出さなかった。だから表向きはきわめて平和にその時は過ぎてしまった。が、僕の心の中は嵐のようだった。
蓉子が同じ問題をふたたびまじめに提出したのは、昨年の十月十九日、すなわちあの事件のちょうど前夜なんだ。蓉子はその時、自分のことをはっきり僕に云った。僕は確信を……」
「何? はっきり云った?」
「うん、十九日の夕食過ぎだ。蓉子がまた、改まって、僕に別居問題をもち出したんだ。もう堪えられなかった。僕はこうきいてやった。
『お前が俺と別れようというには、他に理由があるんだろう。たいてい俺も察している。はっきり云ってくれないか。