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たそがれのこくはく

黄昏の告白

浜尾 四郎

「新青年」博文館、1929(昭和4)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,453 字 · 41 页

青空文庫

しかし、少くも二つの原因らしきもののあったことは、誰しも認めないわけにはいかなかった。

その一つは、大川竜太郎一個人の芸術家としての問題であり、他はまったくこれと異るが同時に非常に有力らしく見えるところの、約半年ほど前に彼の家において行われた有名な悲劇である。

三十歳に達せずして一代の盛名をはせた戯曲家大川竜太郎は、しかし、三十歳に達せずしてその芸術の絶頂に達したのかと思われた。

彼が三十の時、盛名はなおいぜんとして衰えなかったにもかかわらず、ある人々はすでにその作品の中に彼の疲労を発見した。彼が三十一の年その作の中には芸術家としての行き詰りが明瞭に現われはじめた。その年の末に発表されたある戯曲は、作者のこの芸術上の苦悶をはっきりと示していた。彼はあせった。迷った。彼の行くべき途いずれにありや、大川竜太郎は三十一にしてこの苦悶に直面した。

世間はようやく大川の疲労を見てとったのである。しかし彼は怠けていたのではない。彼には怠けることは出来なかったはずだ。けれども、あせればあせる程、彼は自分の無力を感じた。三十二の年をこうやって彼は暮した。一つの作をも発表しないで、否発表し得ないで。