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たそがれ
黄昏
宮本 百合子
「婦人画報」1922(大正11)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,500 字 · 29 页
「それを、どうしてのぶ子は知っているのだろう」
流石(さすが)に、おくめは動悸の速まるのを覚えた。
彼女は暗い足元を拾うように下を見ながら、
「どうしてお前判ったの?」
と訊き返した。
「前にもちょいちょい会ったことがあるんですもの――」
のぶ子は、優しく弁解するような口調で云った。
「――姉さんの家で会ったことがあるの。――だから今度も東京へ来たって知らせてよこしたんだわ」
子供の時から、あんなに仕様のない父親と云い聞かせて置いても物心がつくと、自分に隠してまで会いたく思うのかと思うと、おくめは感動せずにはいられなかった。ただ、親子の縁が断ち難く深いばかりでなく、もうまるで関係ないものと思って来た自分と良人との間は、見えないどこかで、確かりと結び合わされていたのか、と驚くような心持さえするのである。
おくめは、深い思いをかくして、気強く、
「とにかく迷惑のかからないようにしなければいけないよ」
とつぶやいた。
「姉さんだって、一家を持っている体だし、お前だってこれから一人立ちをしようという大切なところだもの。また何かのことでひどい目にでも遭わされたら……」
「大丈夫よ。