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おうごんをあびるおんな
黄金を浴びる女
野村 胡堂
「オール読物」1933(昭和8)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,350 字 · 22 页
お駒は召使と言う名儀でも、実は若旦那の三之丞の愛妾でその存在は次第に火の如くはっきりして来ましたが、まだ、奥の三戸前の土蔵に近づくことなどは夢にも及びません。
七日目、
お駒はとうとうしびれを切らして了いました。
「旦那様」
お駒の愛撫の疲れでウトウトして居た三之丞は、不意に甘い夢から引戻されました。
「何んだ、お駒か」
何時の間にやら床の中から抜出したお駒は、長襦袢一つで三之丞の枕元に坐って居たのです。
行灯の灯が片面を照して居るせいもあるでしょう、何時も滴るような美しい顔が、妙に引緊って、畳に突いた片手は、ワナワナと顫えて居ります。
「私は、眠られません」
「ジッとして居ると眠られるよ、今頃起き出す人間は無い」
三之丞の調子は寝そびれた子供をあやすようですが、お駒は、少し根の弛んだ島田を大きく振って、
「いえ、私は大変な逆上性で、こんな時は、水を冠るか、穴蔵へでも入らなければ眠られないのです」
「なら――」
三之丞は少しからかい気味に半身を起しました。この情熱そのもののような女は、それ位の特異性を持って居るかも知れないと思ったのです。
「お願いで御座います、旦那様、私を裏の三戸前の蔵のどれかへ入れて下さい」