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おうごんをあびるおんな

黄金を浴びる女

野村 胡堂

「オール読物」1933(昭和8)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,350 字 · 22 页

青空文庫

蔵へ行き度い願い

「何うした物で御座いましょう旦那様、どんなに不自由なく暮しても、世間並の囲われ者では、私は厭で御座います」

「待て待て吹屋町へ入れることを、ならぬとは言わぬぞ、一応父上へ申上げて、近いうちに吉左右を知らせるとしよう」

「旦那様、お願で御座います」

お駒は一生懸命でした、ツイぞ側へ寄ったことも無い三之丞の膝に取縋って、それをグイグイと動かし乍ら、あらゆる媚と我儘と、魅惑と香気を撒き散らします。

蔵へ行き度い願い

話は思いの外トントン拍子に進みました。二十六まで独身を通して、お駒より外の女には、振り向いても見ようとしなかった三之丞の一克さが、頑固な父の三右衛門を動かして到頭「召使」という名儀でお駒を容れることになったのは、それからたった三日の後だったのです。

お駒は手軽に吹屋町に乗込みました、が、宏大な屋敷の中に入って、幾十人の召使の中に立ち交ると、今更お駒の美しさが目に付きます。

鉄火者という評判を取ったお駒が、思いの外素直に仕えるので、三右衛門も少し予想外な心持でした。

二日、三日、五日、と日は経ちます。

凶作の後の恐ろしい餓は、江戸中を濡れた灰のように冷たく不活溌にして了いましたが、吹屋町の後藤の屋敷は、栄華と歓楽が渦を巻いて居りました。