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おうごんをあびるおんな

黄金を浴びる女

野村 胡堂

「オール読物」1933(昭和8)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,350 字 · 22 页

青空文庫

二人は二羽の蝶のように、父親の寝部屋に忍び込むと、そっと枕元に這い寄って、手筐の中の鍵と、柱に掛けてある手鍵を持出しました。

「シッ、静かに」

奥に並んだ三戸前の土蔵まで辿り付くうち、三之丞は何べんお駒をたしなめたことでしょう。

お駒はすっかり有頂天になって、執念深く三之丞に絡み付くのでした。

廊下が尽きるところに、金網の掛った、有明が灯いて居ります。三之丞はそれを外して左手に持つと雨戸を開けて、真ん中の土蔵の戸前に掛ります。

大一番の海老錠を外して、塗籠の扉を開くと、中は二重の板戸、それは手鍵一つで、わけも無く開きます。

「騒ぐんではないぞ」

お駒をさし招くと、籠行灯を持ったまま、三之丞は中へ入りました。

最初は、心の激動に何んにも見えませんでしたが、少し落付くと、蔵の中の光景は、想像以上の素晴らしいものだったことに気が付きます。

左右に杉なりに積んだのは、千両箱の山、これが何百あるとも見当が付かないのに、正面は、封をしない小判と大判が本当に砂利のように積んであるのです。

中に交った延べ板、なまこ、地金、砂金の袋などは、その砂利の中の石とも材木とも見られるでしょう、それが大地から掘り出したばかりの、純良無垢な山吹色で、行灯の灯に燦爛と光るのですから、その壮観は言葉にも及びません。