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くろねことみ
黒猫十三
大倉 燁子
「キング 一二巻一号」1936(昭和11)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,366 字 · 29 页
気が急くので肩に引っ担いで歩いた。泥濘に靴が吸いついたり、辷べったりしながら、漸ッとの思いでアパートの階段に辿り着き、自分の部屋まで運んで、取り敢えず壁際のベッドの上に横え、始めて電気の下で少女の顔を見た。
何という可愛らしさだろう、まるで眠っている西洋人形だ、細面で、頤から首筋へかけての皮膚が滑べこそうで、東洋人には珍らしい濁りのない白さだ。睫毛に覆われた眼は切れが長いらしく、開いたらどんなに美しかろう、本庄は思わず低い歎声をもらして見惚れてしまった。
可哀想に、――彼女の洋服は胸から肩へかけて、血のりで肌にねばり着いている。鋭利な短剣か何かで、グザと突刺したのだろうが、酷いことをしたもんだ、こんな天使のような少女を傷つけるなんて。――この出血の工合ではよほどの重傷を負うているに相違いないが、どこに傷口があるのかはよく分らなかった、多分左の肩辺りらしいので、とにかくそこへ自分の半をふわりとかけてやった。
微かな呼吸はしているのだが、少女はなかなか意識を取り戻さない。少し心配になってきた。
「医者を招ばなくっちゃ、いけないかなあ」と思った。幸い今年医科を卒業したばかりの親友が、近所に引越して来たのを思い出した。