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ああぎょくはいにはなうけて

ああ玉杯に花うけて

佐藤 紅緑

「少年倶楽部」1927(昭和2)年5月号~1928(昭和3)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,617 字 · 250 页

青空文庫

「そうだそうだ」と彰義隊は頭に鉢巻きをしておどりあがった。「おれのいいたいことをみんないってくれた」

人々は野淵の荘重な漢文口調の演説を旧式だと思いつつもその熱烈な声に魅せられて、狂するがごとく喝采した、手塚はきまりわるそうに頭を垂れた。実をいうとかれの論旨はある社会主義の同人雑誌から盗んだものなので、その新しそうに見えるところがすこぶる気にいったのであった。かれはこの演説で大いに「新人」ぶりを見せびらかすつもりであったが、野淵に一蹴されたのでたまらなく羞恥を感じた。そうして救いを求むるように光一の方を見やった。

光一はだまって演壇の方へ歩いた。人々はさかんに拍手した。光一は平素あまり議論をこのまなかった。かれは自分でも演説はへただと思っている。だがみなのすすめをこばむことはできなかった。かれは演壇にのぼったとき胸が波のごとくおどった。そうして自分ながら顔がまっかになったことを感じた。だがそれを制することもできなかった。かれは躊躇した。それはさながら群がるとらの前にでた羊のごとく弱々しい態度であった。

千三はじっと目をすえて光一をにらんでいた。

「畜生! あいつなにをいやがるだろう、へんなことをいったらめちゃめちゃに攻撃していつかの復讐をし、満座の前で恥をかかしてやろう」