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ああぎょくはいにはなうけて

ああ玉杯に花うけて

佐藤 紅緑

「少年倶楽部」1927(昭和2)年5月号~1928(昭和3)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,617 字 · 250 页

青空文庫

と安場は三人に向かっていった。

「平等と自由はどんなものか明日の朝までそこで考えて見ろ」

「なわだけはといてやってくれ」と光一が安場にいった。

「いやいや」と安場は頭をふった。「英雄にしばられてなわをとくのはデモクラシーの役目なんだ、さあゆこう」

こういって安場はマッチをパッとすって三人の顔を見た。手塚は涙ぐんでうなだれていた。ろばはきょとんとして首を上げて手塚をののしった。

「だからおれはいやだというにおまえが加勢してくれというもんだから」

「ざまあみろ」と安場はわらった。「それが平凡主義の本性なんだ」

安場は歩きだした。そうして快然とうたいだした。

「ああ玉杯に花うけて、緑酒に月の影やどし、治安の夢にふけりたる、栄華の巷低く見て……」

読者諸君、回数にかぎりあり、この物語はこれにて擱筆します。もし諸君が人々の消息を知りたければ六年前に一高の寮舎にありし人について聞くがよい。青木千三と柳光一はどの室の窓からその元気のいい顔をだしてどんな声で玉杯をうたったか。それから一年おくれて入校した生蕃とあだなのつく阪井巌という青年が非常な勉強をもって首席で大学にはいったことも同時に聞くがいい。