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あすへのわだい

あすへの話題

中谷 宇吉郎

「日本経済新聞」1956(昭和31)年5月~11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,402 字 · 7 页

青空文庫

登呂の遺跡は、寿命が短く、約百年程度つづいただけで、そのあとは、洪水か何かで、埋れてしまった、と考えられている。それであとからまぎれこんだものではない。

古墳時代の以前に、鉄器がやっと入って来たころに、こういう硝子玉があったことは、まことに驚くべきことである。もちろん支那か朝鮮から渡来したものにちがいないが、それが、当時の大和朝廷からほど遠いこの土地まで渡って来ていたことが、驚くべき事実と考えられるのである。

戦後に、「紀元二千六百年」の反動で、科学的歴史が、大いにはやり出した。そして日本の古代史というと、魏志の倭人伝が、大いに幅をきかすようになった。蜀の陳寿の撰で、西紀三世紀ごろにつくられたこの本には、九州北辺と考えられる耶馬台国の人民の生活が、かなり詳しく述べられている。

これは日本の古代史には、重要な文献であるから、それにもとづいて、歴史を「科学的」に書くことはよい。しかし少し偏重の傾きがあるように、私たち素人には感ぜられる。

倭人伝によると、当時の日本人は、顔に入墨をして、ほとんど未開人に近い生活をしていた。そして中国にたびたび入貢して、生口(奴隷)を献上していた。