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あそび
あそび
「三田文學」1910(明治43)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,358 字 · 21 页
木村は同僚の顔を見て、一寸顔を蹙めたが、すぐにまた晴々とした顔になって、為事に掛かった。
暫くすると雷が鳴って、大降りになった。雨が窓にぶっ附かって、恐ろしい音をさせる。部屋中のものが、皆為事を置いて、窓の方を見る。木村の右隣の山田と云う男が云った。
「むしむしすると思ったら、とうとう夕立が来ましたな。」
「そうですね」と云って、晴々とした不断の顔を右へ向けた。
山田はその顔を見て、急に思い附いたらしい様子で、小声になって云った。
「君はぐんぐん為事を捗らせるが、どうもはたで見ていると、笑談にしているようでならない。」
「そんな事はないよ」と、木村は恬然として答えた。
木村が人にこんな事を言われるのは何遍だか知れない。この男の表情、言語、挙動は人にこういう詞を催促していると云っても好い。役所でも先代の課長は不真面目な男だと云って、ひどく嫌った。文壇では批評家が真剣でないと云って、けなしている。一度妻を持って、不幸にして別れたが、平生何かの機会で衝突する度に、「あなたはわたしを茶かしてばかしいらっしゃる」と云うのが、その細君の非難の主なるものであった。
木村の心持には真剣も木刀もないのであるが、あらゆる為事に対する「遊び」