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あめんちあ

あめんちあ

富ノ沢 麟太郎

「改造」1911(明治44)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 41,594 字 · 83 页

青空文庫

彼は訳もなく罵っている自分の声のない声を聞くのであった。

彼は意味のないものへ意味をつけて、非常に不快な気分に襲われていた。

そうして彼は自分を折檻する自分の敵は、すでにその陰謀を暴露したとも考えた。

彼は危険の近づいていることを嗅ぎつけたとも考えた。

――それは灰色の影ではなかった。

それは儚く感ずる成長しかけた夢ではなかった。

それは不規則な連想ではあったが、彼の胸を目がけて、死の烙印をおしつけてくるものであった。

彼はそれから逃れることを考えなければならない。

「死?」

「死!」

「偽ならぬ真実!」と、東洋の詩人が謳ったそのことが、彼には賞牌の浮彫でも見るように、手探りの敏感さで、自分の皮膚へ感じられたように思えた。

その賞牌の表面へ堅牢に浮き上っている線! 彼には、その線を指先ででも触れながら楽しむように、言葉で呼ぶ死というものが大へん興味をもって眺められた。

しか彼は自分へ向って、その死という連続的の真実を見たことがなかったとは言わなかった。

その死の自存を感じなかったとは言わなかった。

また屍灰から生れ屍灰のなかへ没して行くその死を知らなかったとは言わなかった。