轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
あめんちあ
あめんちあ
富ノ沢 麟太郎
「改造」1911(明治44)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 41,594 字 · 83 页
―――――
彼の部屋(土蔵)にただ一ヶ所より外はない窓から流れこむ日光は、彼の顔へ軽くじゃれついていた。
彼は日脚の擽りで睡りを醒した。
しかし悲しい荷物を背負って旅歩きしている人のように、浅い眠りより外は眠ったことのない彼には、未だに夢のなかに取残されているように感じられた。
そうしてあの出来事は、恍惚として醒めきらないこの苦い快感のなかに、未だに織りこまれている。
彼はお柳のことを考えはじめた。
彼は怪しく織りこまれたその糸口を手探りはじめた。
そうして彼は夢のなかのことのようなその空想によって、しばらくの間を楽もうとした。
彼は自分の空想のなかで、お柳とともに話し合うてみたいのであった。
――殆んど話と言っては互に語り合ったことのないお柳と。
――否、彼は自分を奈落の底へ陥れた、彼自身の胸のなかの最初の対象であった相手と話し合ってみたいのであった。
そのために彼は自分とその女との間へお柳をさしはさんでみなければならなかった。
それが嬉しかった。
一層はっきりと彼の瞳へ映ってくるものがあった。
十年も以前、彼はその女を愛した。
――恋した。
しかしその女は、花火のような愛情の閃きを残して、その家族とともに遠くへ旅立った。