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あるおんせんのゆらい

ある温泉の由来

佐々木 邦

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1936(昭和11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,655 字 · 30 页

青空文庫

「君」

「何だい?」

「荒神風呂は荒神風呂として、二三日中に、大騒ぎがおっ始まるぜ」

「何処で?」

「当然東引佐さ」

「何ういう事件だい?」

「明日、いや、明後日来る。その時の楽しみにして置こう」

「大騒ぎと言えば、永徳寺の墓地へ幽霊が出るという評判だぜ。見たと言うものがある」

「それだよ、君」

「知っているのか?」

「ハッハヽヽ」

と早川君は亀を二つ三つハンカチに包みながら得意満面だった。

「何だ? 君のいたずらか?」

「実はね、この間持って帰ったのを利用したのさ。甲羅へ燐を塗って庭へ逃して置いたら、夜になって、家のものが絶叫したんだ。人魂が出たって騒ぎさ。そこで思いついて、君の方のお寺へ持って行った」

「悪いことをする」

「ハッハヽヽ」

「今日も又持って帰るのかい?」

「うむ。これで村の青年の度胸試しをやる」

「亀の子に燐を塗るとは思いつきだね」

「宙をフワリ/\歩くと宜いんだけれど、亀の子の悲しさ、人魂になっても地面をノコ/\這って行く。それでも燐だから皆可なり吃驚するよ」

「こういういたずらは君が名人だ」

間もなく、○○町の名刹千福寺の墓地に毎晩人魂が現れるという記事が新聞に出た。