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あるおんせんのゆらい

ある温泉の由来

佐々木 邦

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1936(昭和11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,655 字 · 30 页

青空文庫

東西引佐の少年はこれ屈竟と雌雄を争う。

「此方は五等で、先方は七等だ」

「去年は此方が八等で先方が六等だったから、丁度好い仇討ちだ」

賞に入らなくとも、目ざす敵に負けなければ宜い。僕の小学校時代に東引佐が一度優勝した。優勝旗を持って西引佐を通って帰るのだから大変だった。

「野郎、来年見ていろ」

と西引佐の小若い衆が目の色を変えてついて来た。此方からも小若い衆が迎いに出た。罷り間違えば血の雨が降る。引率の先生達は随分心配したようだった。

若い者同志は兎角荒っぽい。○○町や山で顔が合う。

「おい。西引佐」

と東引佐が呼びかける時にはもう喧嘩の下心が充分ある。

「何の用だ?」

「他でもない。お前の方の八幡様は贋物だって話だが、矢っ張り御利益があるのかい?」

「野郎、吐かしたな」

「何だって?」

「手前の方こそ代々贋物を拝んで嬉しがってけつかるんだ」

と西の若い者も決して負けていない。

「何方が贋物だ? 昔、おれの方の若い衆がお前の方の八幡様へ忍び込んで、御神体を贋物とすり替えて来たんだ」

「それじゃ泥棒をしたのかい? 東の野郎は手癖が悪い」

「一杯機嫌で行ったんだ。それも御維新前だ。