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いしがおごる
いしが奢る
山本 周五郎
「サンデー毎日臨時増刊仲秋特別号」毎日新聞出版、1952(昭和27)年10月19日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,304 字 · 45 页
三
又兵衛は明らかに仲介役らしく、しきりに座を取持っていたが、暗くなってくると、独りで承知して駕籠を命じ、橋立楼というのへ席を移した。おそらく知らせておいたのだろう、そこには米穀商の島屋真兵衛が待っていて、これも一座になり、夜の十時ころまで賑やかに騒いだ。
三
八幡屋は海産物、青木は廻船と問屋を兼ね、島屋とともに藩の御用商人であり、各自の業で独占株を許されていた。したがって、その利権と富の点で他を抑え、料亭なども掬水亭は島屋、望湖庵は青木、橋立楼は八幡屋と、それぞれが経営するものであった。
能登屋、角屋らの四人は、かれらに対抗する新しい勢力であり、かれらの独占株を開放させるため、ひそかに江戸の重臣へはたらきかけていた。このことは三人の御用商人にもだいたいわかっていた。独占株を許されたかれらは、しぜん藩との財政的つながりが深く、藩に対する貸金は巨額なものになり、殆んど限度に達するほどであった。これはかれらの位置を安全にするようでもあるが、同時に極めて危険な状態でもあった。むずかしいことを云うまでもない、江戸幕府でも数回にわたって、「借上げ」という手を打った。