轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

いしがおごる

いしが奢る

山本 周五郎

「サンデー毎日臨時増刊仲秋特別号」毎日新聞出版、1952(昭和27)年10月19日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,304 字 · 45 页

青空文庫

保馬は声をださずに笑った。

「城代の令嬢は嫁にゆけない躯なんだろう」

「あら」いしは眼をみはった、「そのことはご存じだったんですか」

保馬は逆に訊き返した。

「いしのいい人というのは誰なんだ」

いしは口ごもった。

保馬はすぐにうち消した。

「いや、いいよ、ちょっと口が辷ったんだ」そして足を早めた、「早くゆこう、夜になってしまう」

掬水亭へ着くと、いしは例のとおりはしゃぎだした。いつかの床の上へ席の支度をさせ、今日はこっそり逢曳に来たのだ、などと云って仲居たちを遠ざけ、二人だけで膳に向った。

「あれからもう二た月になりますわね」

「心中のしそこないか」

「あのときはお客に伴れられて来て、いい気になって飲んだもんですからすっかり酔ってましたの、さもなければ間違える筈はなかったんですけれど」いしはこう云って、床の端のところをなつかしそうに見やった、「――そこの処でしたわねえ、貴方はこんなふうにしゃがんで、なにか考えごとをしていらっしゃいましたわ」

「水を眺めていたんだ、小さな魚がつながって泳いでいたよ」

「こんなふうにしゃがんでいらっしゃいましたわ」といしは続けた、「あたしまったく人違いをして、おどかしてあげるつもりで、そっとうしろから忍んでいったんですの、それが酔っているものだからつい」