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いしがおごる

いしが奢る

山本 周五郎

「サンデー毎日臨時増刊仲秋特別号」毎日新聞出版、1952(昭和27)年10月19日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,304 字 · 45 页

青空文庫

二

城代の河瀬主殿は五十二歳、監物も同じくらいの年配で、どちらも北陸人らしくおちついた温厚な人柄であった。二人は保馬からなにか聞き出すつもりのようで、(特に監物が)話の合間にそれとなくかまをかけるようなことを云った。

「べつにさしたることもありません」保馬は軽く答えた、「早く云えば、まあ見合に来たようなものです、むろん御存じでしょうが」

「いやそれはまだ」と主殿が少し慌てて云った、「まだはっきり定ったわけではないので、まだ誰にもその話はしていないのだ」

主殿はかなりばつが悪そうであった。そうして、監物に向って釈明するように、まだ確定はしていないが娘の花世と保馬とのあいだに縁談が進んでいる、ということを語った。

「すると御息女は……」監物はちょっと訝しそうに口ごもったが、すぐにそれを打消して祝いを述べた、「いや、それはそれは、少しも知りませんでしたが、それはまことにめでたいことで、ぜひ一日も早くそうありたいものでございますな」

「ともかくもう暫くのあいだ御内聞に」

主殿は煮えきらない口ぶりでそう云った。

保馬は主殿から晩餐の招待をうけて下城した。

二

河瀬の招待に続いて、重職の人々が次々に保馬を招いた。