轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

いしがおごる

いしが奢る

山本 周五郎

「サンデー毎日臨時増刊仲秋特別号」毎日新聞出版、1952(昭和27)年10月19日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,304 字 · 45 页

青空文庫

こんなに濡らしてしまって、ほんとに済みません、あたししみ抜き代を出しますから」

保馬は黙って梯子のあるほうへ歩きだした。娘は慌てて呼びとめた。彼の半開きにした扇子が、そこに浮いていたのである。

「あのう、これをお忘れになりました」

そして扇子をひろげてみせたが、ひろげるにしたがって紙と骨とがばらばらに剥がれてしまった。娘はすっかりまごついて、そのばらばらになったのをさし出しながら、おじぎをした。

「こんなになっちゃいましたわ」

保馬はちょっと見たばかりで、手を出そうともせずに床へあがった。――話しこんでいた千之助と仲居(おたけという名であったが)とは、保馬の姿を見て吃驚した。保馬はただ水へ落ちたとだけ云った。おたけはすぐに風呂の支度をしに立った。

「八幡屋の連中だそうです」

おたけが去ると千之助がそう云って、別棟になっている座敷のほうへ眼をやった。そちらでは二人があがるまえから騒いでいる客があった。三味線や太鼓をいれて、相当はでに騒いでいたのである。

「外島さんが客だそうです」

千之助はそう付け加えた。濡れた帷子を脱ぎ、躯を拭いていた保馬は、千之助の言葉を聞いていたのかどうか、ふと喉でくすくす笑いだした。