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うずめられたかがみ
うずめられた鏡
小川 未明
「女学生の友」1953(昭和28)年8月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,962 字 · 12 页
「まあ、こちらへいらして、ごらんください。」と、助手の小田さんは、先に立って、博士を、しんとした、うすぐらい研究室へ案内しました。
そこには、大きなろうそくが、ともされていました。かげろうのうごくように、ろうそくの火は、下におかれた鏡のおもてを照らしていました。
博士は心をおちつけて、鏡をのぞくと、そこにあやしげな身なりをした、男女がならんで、おぼろげに浮き出ていました。
年とった、この考古学者は、しばらく目を、鏡からそらさずに、沈黙していましたが、そのうち、うめくように、
「ああ、やはり女は、七人のうち、この鏡をくれた男だけを、深く愛していたとみえる。」と、はじめて、そのなぞが、解けたといわんばかりに、ひくい声でさけびました。
「先生、するとこの女は、貞操をまもりたいばかりに、だまって死をえらんだのですね。」と、小田さんが聞きました。
「たしかにそうだよ。死んでから、地下で二人は、永久の幸福をもとめて、約束をはたしたんだね。」と、博士は答えました。
「西洋流ですと、婚約の指輪をおくる風習がありますが、東洋は日本でも、昔から、女の心をうつすといって、鏡をたいせつにしましたが、婚約にも用いられはしなかったでしょうか?」