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うずめられたかがみ
うずめられた鏡
小川 未明
「女学生の友」1953(昭和28)年8月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,962 字 · 12 页
こうして、白い雲は、南方の高い山から、うごきはじめて、北の海のほうへ流れていたのであるが、途中、ゆらゆらと平野をいったとき、そこここに、百姓のすむわらぶきやがあったり、畑をたがやす男女や、馬や、牛や、犬などの姿が、ちらちらと見えました。
こんもり木立のしげるところに、丹塗りの社があって、その前に、人がひざまずいて、よく祈願をこめていました。ちょうどこのとき、男は、神さまにお礼をいっているのでした。
「神さま、よく私を人間として、生まれさせてくださいました。もし、そうでなかったら、私は毎日、くるしいめにあって、なぐられたり、追いまわされたりしなければならなかったでしょう。それをおかげで、牛や、馬をつかって、楽に仕事をして、暮らすことができます。これというのも、人間に生まれさせてくださった神さまの、おかげであります。」と、もうしていました。
この男が去ると、つぎに社の前へきてすわったのは、まだ若い女でありました。彼女は、熱心に手をあわせ頭をひくくたれて、ねがっていました。
「いま私は、七人の男から、結婚をもうしこまれていますが、私の心の中で愛する男は、その中の一人です。