轻松读懂日语经典作品
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おさん
おさん
山本 周五郎
「オール読物」文藝春秋新社、1961(昭和36)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,128 字 · 66 页
二の七
「おまえなんていう名だ」
「おれのか」子供はさもうんざりと云いたげに首を振った、「おじちゃんはなんにも聞いてねえんだな、さっきそ云ったばかりじゃねえか、伊三だよ、伊三郎ってんだってば」
「悪かった、そうか伊三だったけな」
「もう一つのほうも忘れたんじゃねえのか」
「なんのことだ」
「あれだ、どうもおかしいとは思ったよ、あんまりよしよし云うもんだから、――子供だと思ってばかにしてたんだな」
「怒るなよ、考えごとをしていたんだ」と云って参太は立停った。「おめえおれに頼まれてくんねえか」
「自分のことで頭がいっぱいなんだな」
「そっちの話も聞くよ、もういちど云ってみてくれ」
「おれのほうはあとだ」と伊三は小なまいきに片手を振った、「おじちゃんのほうを先にするから用を云ってくんな」
二の七
その夜の十時すぎ、――参太は魚河岸の外れにある「吉兵衛」という居酒屋で飲んでいた。まえの年に、飲食店の時間にきびしい制限が布令だされ、もちろん裏はあるにはちがいないが、この魚河岸はまるで別格のようで、表もあけたまま、軒提灯も掛けたまま、客は遠慮のない高ごえで、笑ったりうたったり、囃したてたりしていた。