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おじさんのはなし
おじさんの話
小山 清
「新潮 第五十巻七号」新潮社、1953(昭和28)年7月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,232 字 · 42 页
○○寺はわりと小体な寺院であった。門構えも瀟洒で俗でなかった。私はまずその見かけに一目惚れをした。住職も必ずや奥床しい心根の、清貧に安んずる人に違いないという気がした。
庫裏の入口のわきに、一もとの栗の木があって、折から花をいっぱいつけていて、その匂いがはげしく鼻を刺戟した。私は案内を乞うた。
「ごめん下さい。ごめん下さい。」
応はない。奥の方からかすかに琴の音がきこえてきた。
「ごめん下さい。」
琴の音が止んだ。待つ間ほどなく、洋装の娘さんがあらわれた。
「野辺地さんの知辺の者ですが。」
「あ、おじさんですか。おじさんは一寸出かけておりますけど。」
おじさんは当寺に於ても、もはやおじさんと呼ばれているようであった。
「それでは後ほどまたお伺いします。」
「いいえ、すぐに戻って参りますから、よろしかったら、お待ちになって下さい。」
「それでは待たさせていただきます。」
私がそこの式台のはしに腰をかけようとしたら、娘さんは、
「あの、こちらでお待ち下さい。」
と云いつつ、下駄を突っかけて庫裏の外に出た。私は娘さんの後に従った。庫裏の横手に物置小屋のような軒の低い小家があって、娘さんはその軒下をくぐりながら、私をかえりみて、