轻松读懂日语经典作品
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おばなさわ
おばな沢
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1949(昭和24)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,479 字 · 45 页
三
節子が幼いころ聞かされた話によると、そこには奥の知れぬ深い峡谷や、野獣の棲んでいる原始林などがあり、またその峡谷の一部にはふしぎな土民がいて、これまでどの領主にも従わず、世間へも出ずに生活している。そういう伝奇的な感じのつよいものであった。
――そんなような処で、いったいなにが起っているのだろうか、絶えず危険に備えているとはどんな意味なのだろうか。
事情がてんでわからないと、手紙の書きぶりが不吉なことを暗示するようで、節子はだんだんと不安なおちつかない気持になっていった。
三
七月の下旬、季節はもう秋にはいったわけだが、その年はじめてという暑い日の午後、英之助がまえぶれもなく訪ねて来た。
彼は日にやけて、かなり肥えていた。頬や肩などにこりこりと肉が附いて、全身に活気が充満しているようにみえた。休暇を三日もらったのだそうで、その日はすぐ帰り、翌日とその次の日と続けて来た。
節子は手紙のことを聞きたかったが、彼はさりげなく躯を躱して、専ら山の風物やそこの生活ぶりを話すばかりだった。
「その森の凄いことときたら、檜や杉なんぞの千年も経ったかと思うやつが、幹や枝をびっしり重ねて繁っていて、その中にしぜんと枯れたのや落雷で裂けたのが、白く晒されて、まるで巨人の骸骨かなんぞのように、こう、しんと立っているんです、まるで