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おならさま

お奈良さま

坂口 安吾

「別冊小説新潮 第八巻第一〇号」1954(昭和29)年7月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,159 字 · 20 页

青空文庫

さア、おいで下さい」

お奈良さまを自分の居間へ案内して、遺骨や位牌を運んだ。

「本日はホトケのためのお志、まことにありがたく存じます。ホトケの最後の言葉が、近々あの世へ参りますからお奈良さまにお経もオナラもあげていただきますよ、というのだから、本日はさだめしホトケも喜んでいることでしょう。ここはずッと離れておりますから、どうぞ心おきなく」

「そうおッしゃッていただくと、ありがたいやら面目ないやら。あなた様にはいつも厚いお言葉をかけていただきまして、まことにありがたく身にしみておりまする。ブウ。ブウ。ブウ。これは甚だ不調法を」

「イヤ。お心おきなく。ホトケがよろこんでおります。私もちょッと、ブウ。ブウ。ブウ」

「オヤ。ただいまのは私でしたでしょうか。まことに、ハヤ」

「ただいまのは私です。私もいくぶんのオナラのケがありましてな。また、ブウ。ブウ。ブウ。これも私」

「これはお見それいたしました」

「実は今回のことについては私にも原因があるのです。お奈良さまほどではありませんが、私もかねてオナラのケがあるところから、人前ではやりませんが、家では気兼ねなくやっておりました。