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おならさま
お奈良さま
「別冊小説新潮 第八巻第一〇号」1954(昭和29)年7月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,159 字 · 20 页
祖母の孫たるの情において、あなたの顔を見ることにすらも堪えがたい思いです。肌にアワを生じる思いです」
なぞと雄弁をふるった。そんなわけで花子は寺へ泣いて帰った。
お奈良さまもソメ子にトドメをさされて戻ってきたところであった。自分のトドメだけなら円熟した心境でなんとなく処理もできるところであったが、花子の悲哀は思わぬ伏兵であるから気がテンドーした。娘を慰める言葉もなく途方にくれていると、例の物だけはこの際でもむしろ時を得顔に高々と発してくる。四ツ五ツまるまるとした音のよいのがつづけさまに鳴りとどろいたから、花子はワッと泣き叫んで自室へ駈けこみ、よよと泣き伏してしまった。
「はてさて、こまったことになったわい。オナラというものは万人におかしがられるばかりで人を泣かせるものではないように思っていたが、因果なことになった。しかし娘の身になれば無理もない」
花子には悲しい思いをさせたくないから、お奈良さまも意を決し、放課の時刻を見はからい、学校の門前で校門を出てくる糸子を呼びとめて対話した。
「このたびは御尊家の葬儀を汚してまことに恐縮の至りでしたが、あれに限って娘には罪がないのでなにとぞ今まで通りつきあってやっていただきたいとお願いにまかりでましたが……」