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おじぎ

お時儀

芥川 竜之介

作家保吉被一阵气味唤起记忆,多年前在避暑地车站偶遇一位穿银灰色洋服的小姐。那段朦胧的邂逅,至今仍让他心头一颤。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,067 字 · 9 页

青空文庫

人ごみを離れたベンチの上に雑誌などを読んでいることがある。あるいはまた長いプラットフォオムの縁をぶらぶら歩いていることもある。

保吉はお嬢さんの姿を見ても、恋愛小説に書いてあるような動悸などの高ぶった覚えはない。ただやはり顔馴染みの鎮守府司令長官や売店の猫を見た時の通り、「いるな」と考えるばかりである。しかしとにかく顔馴染みに対する親しみだけは抱いていた。だから時たまプラットフォオムにお嬢さんの姿を見ないことがあると、何か失望に似たものを感じた。何か失望に似たものを、――それさえ痛切には感じた訣ではない。保吉は現に売店の猫が二三日行くえを晦ました時にも、全然変りのない寂しさを感じた。もし鎮守府司令長官も頓死か何か遂げたとすれば、――この場合はいささか疑問かも知れない。が、まず猫ほどではないにしろ、勝手の違う気だけは起ったはずである。

ところが三月の二十何日か、生暖い曇天の午後のことである。保吉はその日も勤め先から四時二十分着の上り列車に乗った。何でもかすかな記憶によれば、調べ仕事に疲れていたせいか、汽車の中でもふだんのように本を読みなどはしなかったらしい。