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おさかなじょし

お魚女史

坂口 安吾

「八雲 第三巻第八号」八雲書店、1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,457 字 · 19 页

青空文庫

おイヤ? あらア、そんなことないでしょう。アラマ、エヘヘ、言ッチャッタワヨ、アハハ、バカネ、チェッ!」

マッカになってオデコをたたいたり、舌をだしたり、そんな忙しい合間に、私に、一段目、二段目、三段目ぐらいまでナガシメをくれる。

「私ね、先生、ちかごろ、小説かいてんのよウ。それが出来たら、遊びに行くわア。読んで下さるウ。私、ヘタよウ。でもネエ、ちょッとしたもんだわア。エヘヘ。おかしくないですかア。おかしいですかア。アラ、イヤだア、キャーッ」

小説書きというものは、はからざるところで、この脅迫におびやかされるものであるが、この時ばかりは、私も心胆がつめたくなってしまった。

「それ、私小説?」

と、私がきくと、とたんにマッカになって、身をくねらせて、

「あらア、先生、イヤだわア。あら、ワタシ、ハズカシイ。先生たら、私小説だなんて、あら、そんな、まア、ハズカシイ。あらア、セーンセ。イヤよウ。ヒドイことよウ」

大変な騒ぎで、こゝで又、四段目から、五段、六段目ぐらいまでナガシメをいたゞく。忙しい合間に、なるほど、ナガシメだけは、よく、うごく。

「なぜ、はずかしいの」