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がん

がん

小川 未明

「民政」1934(昭和9)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,900 字 · 6 页

青空文庫

」

「おじいさん、なんだか夢のような話ではあるが、そこをはっきりと覚えていますか。」と、若いがんがたずねました。

「小さい時分のことを、どうして、よく覚えていよう。かすかな記憶にしか残っていない。しかし、そこを探し出すのだ。」と、年とったがんはいいました。

りこうな若いがんは、みんなを呼び集めて、その夜、月の下で協議を開くことにしました。するといろいろの説が出ました。

「人間のみずから設けた禁猟区にいて、こちらの身の安全をはかるということは、なんと賢明なやり方ではないか。もしここを飛び出したが最後、自分たちは、いつどこで、どんな危険にさらされないともかぎらないだろう。」と、Bがんが、いいました。

「その心配は道理である。が、おじいさんは、ほんとうにそうした理想の世界を知っているのだろうか。」と、冒険好きな、Kがんがいいました。

「小さな時分に、旅をする途中で見たというのだ。そしていま、その記憶はかすかになったけれど、おじいさんは、探せばかならず見いだせるという強い信念を有しているのだ。」と、この禁猟区に、はじめてみんなを導いた、りこうながんがいいました。

「そんなら、俺たちは、おじいさんに案内を頼んで、出かけることにしようじゃないか。