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きつねをおがんだひとたち
きつねをおがんだ人たち
小川 未明
「週刊家庭朝日」1950(昭和25)年1月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,266 字 · 5 页
翌朝見ると、はたして湖水の面は、鏡のごとく光って、かたく張りつめた氷は、武士をやすやすと、むこうの岸まで、渡らせてくれたのでした。
この、いなりの社は、武士が、お礼に建てたものだといいつたえられています。
話はべつに、ある日、町の病院で、貧しげなふうをした母親と少年の二人が、待合室の片すみで、ちぢこまって、泣いていました。ちょうど、こちらには、こざっぱりとしたようすの母子が、すわっていましたが、子供はまだ小さく、母のほうはどことなく情けぶかそうに見えました。すると、彼女は立ちあがって、
「どうなさったのでございますか。」と、少年に気づいて、たずねました。あわれな少年の母親は、
「この子が、このあいだから、手が痛いといいますので、今日きて見てもらいますと、もうておくれになっているので、すぐに片方の腕を切りとってしまわなければ、命がないとおっしゃいます。どうしたらいいものか、迷っているのです。」と、答えました。
そのとき、子供の母は、持ち合わせの金を紙につつんで、おみまいのつもりで、なにかにつかってやってくれとやったのでありますが、子供も心をうたれて、気の毒な少年の顔をじっと見まもっていました。