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きつねをおがんだひとたち
きつねをおがんだ人たち
小川 未明
「週刊家庭朝日」1950(昭和25)年1月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,266 字 · 5 页
その子供が、中学へ上がるころのこと、道を歩いていると、荷車を引く、強そうな若者と出あいました。ふと顔をあわせると、いつか病院で、腕を切らなければ死ぬといわれた少年でした。若者もおどろいて、頭を下げ、
「いつぞやは、ありがとうございました。その後、おいなりさまに願をかけますと、うみが出まして、いまではこうして働けるようになりました。」と、いいました。
これを聞くと、やはり神はあるのだと、深く感ぜずにいられませんでした。これまで書いたのは、これから、私がこの少年の将来を語るに必要な、まえがきのようなものであります。
やがて、少年は学校を出て成人すると、にぎやかな都会にあこがれ、そこで暮らすようになりました。またぜいたくがしたくなり、千金を夢みて株などへ手を出すようになると、さすがに自分の力ばかりを信じられず、ひたすら神さまを頼ろうとするようになりました。
彼は、毎朝起きたときと、夜ねむるときには、かならずふるさとの方をむいて、頭を下げ、あのさびしい森の中の社をおがんだのです。そして、風の吹く日は、ゴウゴウと木の枝がさわぐありさまを想像し、雨のふる日は、おまいりするものもない、ぬれた社殿の屋根を目にえがきながら、どうぞ私を助けたまえとおがみました。