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けしのはたけ

けしの圃

小川 未明

「赤い鳥」1920(大正9)年7月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,337 字 · 11 页

青空文庫

「小太郎じゃないか。」と、美しい女の人はいいました。

小太郎は、自分の名を呼ばれたので、びっくりしました。急には、返事ができなくて、黙って、立って女の姿を見守っていますと、

「おまえは、小太郎じゃないか。」と、なつかしい声で、二度呼びかけられたので、小太郎は、自分を忘れて、

「あなたは、お母さんですか。」といって、女の人に飛びつきました。

「どうして、よくおまえはかえってきておくれだ。おまえがいなくなった日から、私は、幾年の間毎晩、ここに立っておまえの帰るのを待っていたかしれない。ちょうどおまえが四つの夏の日だった。やはりこうして笛を吹いて、門の外に出たかと思うと、いつのまにかおまえの姿が見えなくなった。おまえの帯にはお守り袋がついていて、それに名まえが書いてあるから、迷ったならだれか連れてきてくれるだろうと思ったが、それぎりついに帰ってこなかった。きっと、人さらいに連れられていってしまったものと思ったが、私は、その日から、病気になってしまって、明け暮れおまえの身の上ばかり案じていた。おまえは子供の時分に片方の目がいけなくて入れ目をしていたが、ほんとうの小太郎なら目が悪いはずだ。