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けしのはたけ
けしの圃
小川 未明
「赤い鳥」1920(大正9)年7月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,337 字 · 11 页
その話は、よく小太郎にはわからなかったけれど、知らぬ男と女に、小太郎をくれてやるというような話らしかったのです。小太郎は、なんとなく心細くなって泣きたくなりました。そして、はたしてそれはほんとうに父がそう思っているのだろうかと振り向いて父親の顔をじっと見つめました。ちょうど、そのとき、知らぬ女が、
「だって、この子は入れ目じゃないかね。いくらなんぼでも役にたたない。」といいました。つづいて、知らぬ男が、しゃがれ声でなにかいいました。
「さあ、あちらへいこう。」と、父親は、急に小太郎の手を取りました。小太郎は、やはり自分は父親とは離れることがないのだと思うと、急に気がゆるんで一時に熱い涙がほおに伝わりました。
それから、その暗い宿を立って、また松原の中の小路を歩いて、つぎの町の方へと二人はいきました。
小太郎は、歩きながらいろいろなことを空想しました。いつも父親に気に入らないことがあるたびにひどくいじめられるよりは、あの女の人のところへ、もらわれていったら、あの女の人は、自分をかわいがってくれなかろうか。けれど、あのしゃがれ声の男の人は怖い。などと思いました。