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さかずきのりんね

さかずきの輪廻

小川 未明

「婦人公論 9巻1号」1924(大正13)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,603 字 · 21 页

青空文庫

そして、またここで、日影のうすい、一日をまどろむのでした。

さかずきにとって、田舎へいったこと、仏壇に酒をついで上げられたこと、毎日、毎日、女房が磬をたたいたこと、箱に収められてから、暗い、ひきだしの中にあったこと、それらは、ただいっぺんの夢にしか過ぎませんでした。

さかずきには、家の前をかごが通ったことも、いま人力車が通り、自動車が通ることも、たいした相違がないのだから、無関心でした。

ただ、ある日のこと、太鼓の音と、笛の音と、御輿をかつぐ若衆の掛け声をききましたので、しばらく遠く聞かなかった、なつかしい声をふたたび聞くものだと思いました。

そして、自分は、またどうして、同じ所へ帰ってきたろうかと疑いました。

はかない、薄手のさかずきが、こんなに完全に保存されたのに、その間に、この街でも、この世の中でも、幾たびか時代の変遷がありました。あるものは、生まれました。またあるものは、死んで墓にゆきました。

それが、さかずきにとって、芸術の力でなくて、偶然な存在だと、なんでいうことができましょう。

この街では、ちょうど昔からの氏神さまの祭日に当たるのでした。