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そのきどをとおって
その木戸を通って
山本 周五郎
「オール読物」文藝春秋新社、1959(昭和34)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,448 字 · 44 页
そうか、とやがて彼は呟いた。そうだ、そうすればよかった、そうすればからくりがわかったんだ。そして彼は勢いよく起きあがり、寝衣のまま家扶の部屋へいった。
吉塚助十郎は茶を飲んでいた。
「あの娘はどうした」と正四郎はいきなり訊いた、「追い出してしまったか」
吉塚は湯呑を置いて、「それが、その」と口ごもって云った、「着物のかぎ裂きなどを繕っておりましたので、まだその」
「よし、それでよし」と彼は云った、「そのほうがよかったんだ、ちょっと考えたことがあるから、追い出すのは夕方にしてくれ、どいつの仕業かおれがつきとめてやる」
不審そうな顔をする吉塚助十郎に、彼はなにごとか囁き、寝間へ戻って横になった。正四郎は午ちょっとまえに起き、食事をしてまた寝間へはいった。五日間の疲れもあったし、これから自分のすることについて、充分に検討しておきたかったからである。――問題は簡単なのでいつか眠ってしまい、吉塚に起こされたのは三時過ぎであった。雨はさかんに降っており、助十郎は浮かない顔をしていた。娘は本当にゆく先がないらしい、どうも追い出すのは気が咎める、と云う。もし許してくれるなら、自分たち夫婦で暫く面倒をみてやりたい、などとも云った。