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だまされたむすめとちょうのはなし

だまされた娘とちょうの話

小川 未明

「小学六年生 4巻2号」1951(昭和26)年5月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,555 字 · 9 页

青空文庫

また口入れ屋へいくにしても、髪形がきれいであれば、いっそう、いいところへ世話をしてくれるにちがいないと考えて、かねて、一度入ってみたいと思った、美容院を歩きながらさがしました。

たまたまあった、美容院の扉を押して内へ入ると、室内は、いい香りがただよい、花の乱れるように、美しい娘たちが、あふれるばかり集まっていました。かの女は、顔がぼうっとしたが、だんだん、おちつくと、ひとりひとりの、美しい顔を見たのでありました。そして、心ひそかに、

「さっきまでいた病院と、こことのありさまは、なんというちがいだろう。」と、つぶやかずにいられませんでした。

そのとき、季節はずれの、大きな黒いちょうが、どこから迷いこんだものか、ガラス窓につき当たって、しきりと、出口をさがしていました。

「かわいそうに、花園と思って、香水や、電気にだまされたんだわ。」

かの女は、まだ自分が、ちょうど、そのちょうであることに気がつきませんでした。

思いのほか、電髪に手間どられて、外へ出たときは、いつしか西の方の空が、わずかに淡紅色をして、日が暮れていました。平常、むだづかいをせずにためていた金があるので、これから、宿屋で泊まろうと、すでに顔なじみの口入れ屋へいこうと、その心配はないけれど、さすがに心細く思いました。