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どこかにいきながら

どこかに生きながら

小川 未明

「童話」1946(昭和21)年7月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,469 字 · 9 页

青空文庫

こんなことが、二度とないように、こらしめるとでも思ったのでしょう。しかし、彼女のもどったときは、二匹のねこの姿は、もう見えませんでした。

重なり合うように、建ち並ぶ家々の屋根は、さながら波濤のごとくでした。地の上ですむことのできないものは、ここが唯一の場所であったかしれません。二匹のねこは、もう降りようとしませんでした。ときどき、おびやかすように、ものすごい木枯らしが、吹かなければ、なおよかったのです。

「おまえは、どこへいってもいけないよ。じっとして、私の帰るのを待っておいで。」

母ねこは、こう子ねこにさとしたのでした。高い家にはさまれて、目立たない平家は、比較的風もあたらなければ、日が射すと、ブリキ屋根から陽炎の立ちそうな日もありました。子ねこが、一人歩きさえしなかったら、ここは、どこよりもいいところだったにちがいありません。しかし、いくたびとなく追われ、いじめられつづけて、そのたびに母ねこが、命をかけて守ってくれたのを知っているので、子ねこは、いいつけにそむくことはなかったのです。

母ねこは、後に残した子ねこのことを心配しながら、方々のごみ箱や、勝手もとをあさったのでした。