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どこでふえふく

どこで笛吹く

小川 未明

「少年倶楽部」1916(大正5)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,812 字 · 12 页

青空文庫

いて、その木の色といい、土の色といい、空の感じといい、それはいまにも動きそうに描けていたのでありました。少年は熱心に美しい絵の具箱の中に収めてあるいろいろの絵の具を一つ一つ使い分けて草を描いたり、また鳥などを描いたり、花などを描いたりしていました。

光治は自分の吹く笛の音につれて、小鳥がいっしょになってさえずるのを自慢にしていました。いま、少年の描いた小鳥は、紙の上から翼ばたきをして飛び立つのではないかと思われました。そして、たったすこし前まで、自分はこの美しい自然に見とれていたのであるが、このきれいな緑色の木立も日の光も、山も、草も、みんなそのままに絵の具の色ですこしも変わらず、かえってそれよりもいきいきとした姿で紙の上に描かれているのを見ますと、光治は、もはや笛を吹くことよりは、自分も絵を上手に描いたほうがいいように考えました。

「君かい、さっき笛を吹いていたのは。」

と、その少年はふり向いて光治の顔を見て、ちょっと笑っていいました。

「ああ、僕だ。」

と、光治は簡単に答えた。

「君はよくこの森へ遊びにきて、笛を吹くのかい。」

と、また少年は問いました。