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どこでふえふく

どこで笛吹く

小川 未明

「少年倶楽部」1916(大正5)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,812 字 · 12 页

青空文庫

三

三

光治が笛を吹くのを聞くと、だれでもそれに耳を傾けて、感心しないものはなかったのです。光治ははじめのうちは、その笛を大事にして、夜眠るときでもまくらもとに置いて、すこしも自分の体から離したことはなかったのです。彼はだんだん笛が上手になって、なんでも笛で吹けぬものはないようになりました。そして、自分を慰める、もっとも楽しいものは、まったくこの世界に笛よりほかにないと思ったのであります。

夏休みになったある日のことでありました。彼は麓の森の中に入って、またいつもの木の根に腰をかけて心ゆくばかり笛を吹き鳴らそうと思い、家を出かけました。緑の森の中に入ると、ちょうど緑色の世界に入ったような気持ちがいたしました。足もとには、いろいろの小さな草の花が咲いていて、いい香気を放っていました。ところどころ木々のすきまからは、黄金色の日の光がもれて、下の草の上に光が燃えるように映っています。

光治はしばらく夢を見るような気持ちで、うっとりとして一本の木の根に腰をかけて、笛も吹かずに、おだやかな夏の日の自然に見とれていました。

「どうしてこう青葉の色はきれいなのだろう。