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なよたけ

なよたけ

加藤 道夫

「三田文学 四・五月号、六月号、七・八月号、九月号、十・十一月号」1946(昭和21)年5月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,415 字 · 163 页

青空文庫

遠慮なんかしてたらいつまで経ったってらちがあかない。もちろん、僕はあの当世流行のつけぶみと云う奴は大嫌いだ。こそこそまるで悪いことでもしてるように、巧くもない文章を紙に書き並べて、逃腰半分で打明けるなんてのは、第一、男らしくもないし、……それに卑怯だ。もちろん、面と向って、堂々と口で打明けるんだ。……そりゃ、そうだぜ、君、いつまでもぐずぐずそんな態度を続けて行ったとしてごらん。せっかくの恋も水沫のごとく消え去ってしまうのだ。例えばね、先方でも君のことを慕っているとする。……いいかい?……いつまでも君が愛を打明けてくれるのを待っている。……待っても待っても打明けてくれない。……そのうちに他の恋敵があらわれて、先に結婚を申し込んでしまう。ね? 君はもう破滅だ。……君の「恋」は永久にそこで終ってしまうかもしれないのだ。

話の途中から、空には星々が燦然と輝き始めた。………

文麻呂はそっと清原ノ秀臣の反応を窺ってみる。彼は黙ったまま、俯向いている。ふと、遠くの竹林の中から、まるでざわめく風の中からでも生れたかのように、わらべ達の合唱する童謡が、美妙な韻律をひびかせながら、だんだんと聞えて来る。