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なよたけ

なよたけ

加藤 道夫

「三田文学 四・五月号、六月号、七・八月号、九月号、十・十一月号」1946(昭和21)年5月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,415 字 · 163 页

青空文庫

瓜生の山奥と云ったって、ここからは二里とは離れてやしないんだから、僕だって逢いたくなりゃいつだって逢いに行けるんだ。……ああ、何だか急に風が強くなって来たようじゃないか。

竹林のざわめきが、急に何やら騒がしくなって来る。……不穏な風の渡る音。山鴿の鳴く声さえも、途絶え勝ちだ。空模様もだんだんあやしくなって来る。燦然と瞬いていた星々も、あっちにひとつこっちにひとつとだんだん消え失せて行く………

瓜生ノ衛門 (不安そうに)何だか気味の悪い空模様になって参りましたな。嵐でも来そうな気配でございますよ。……そろそろお家へお帰りになってはいかがです?

強い風が不気味な音を立てて、吹きわたりはじめた。

文麻呂 おう、竹の葉があんなに烈しくざわめき始めた。星々がだんだんと消えて行く。………(独白)父上は大丈夫だろうな? 竹林の「恋」は健在かな?

瓜生ノ衛門 (何やらはたと思いついて)文麻呂殿! 瓜生ノ衛門、すっかり失念致しておりました! 実は手前、大変な噂の証拠をつきとめたのでございます。大納言様のことでございます。大納言様の道ならぬ浮名の恋でございます。しかも相手はとんだ賤しい田舎娘。