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なよたけ

なよたけ

加藤 道夫

「三田文学 四・五月号、六月号、七・八月号、九月号、十・十一月号」1946(昭和21)年5月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,415 字 · 163 页

青空文庫

いや、これだけはっきり尻尾を掴んだら、それこそ大納言様の名声もたちどころ、と云ったよりどころでござりますぞ。昨日の午後でござりました。手前、何気なくこの先の竹林に筍を探しに参ったのでございます。……どうでしょう! まあ、大納言様ともあろう御方が、忍ぶ恋路のなんとやら、………いやもう大変な忍びのいでたちで、ついこの先の竹林の奥に住んでいる竹籠作りの爺の娘におふみをつけようとなさっているのを、手前この目ではっきり見てしまいました。

文麻呂 (きっとなって)なにッ!

瓜生ノ衛門 (少々驚いて)おふみでございます。

文麻呂 いや、そんなことじゃない! 相手はどこの娘だと!

瓜生ノ衛門 竹籠作りの爺の娘でございます。この造麻呂と云う爺は手前も少しは存じている男でござりまするで……

文麻呂 名前は何て云うんだって!

瓜生ノ衛門 讃岐ノ造麻呂でございます。

文麻呂 (苛立って)爺じゃないよ! 娘だ!

瓜生ノ衛門 娘の名は、たしか……さよう、……なよたけとやら申しました。

文麻呂 何ッ! なよたけ!

瓜生ノ衛門 (あまりに烈しい語気に呆気にとられる)

丘の上にはいつの間にやら、清原ノ秀臣が悄然として佇立している………